ブレイク-エイジ外伝
     虚構世界の真実


  Ver1.2  「一人ぼっちの空の王」


 蒼空。
 雲より高い真っ青な空を切り裂くように、白銀の槍が地面に向かって突き刺さったように見えた。だが、その槍先は、地面直前で水平飛行にうつり、貫くべき敵を探す。
 最初に動いたのは、敵の方だ。一回り大型にカスタムされたボルゾイが、バルカンを空に向けて弾をばらまくが、光弾が届く頃にはすでにその場にはいない。機体をロールさせ、うまく射線から逃れる。  ボルゾイの頭の上をそのVPが通りすぎた。だが、すぎてから、白い4枚の翼を撓ませ、脚部にあたる大出力バーニアがうなりをあげる。純白のVPは、急角度で取って返し、ボルゾイを、すり抜け様の剣の一閃が吹き飛ばした。

 「あたしに勝とうなんて100年はやい!」

 TENは手早く残弾と被弾個所をチェックし満足げに笑うと、レバーを操作し「ウラヌス」をレーダーに表示されている最後の赤光点に向わせる。
 他の光点はすでに再出撃である事を示す、緑の光点になっている。勝者の栄冠を勝ち取るには、一騎打ちで勝者を決めるだけだ。
 高めの丘陵の向こうで、大輪の紅花が咲きしぼむ。そして、その場に仁王立ちする重厚なフォルムのVPが、「ウラヌス」へと向き直った。

「やっぱ、最後まで残ったのってTENちゃんかぁ♪」

 VPの容姿に似合わない、間延びした声が辺りに響く。
 TENは、見上げるVP「ジャスティス」からの言葉に、声を出さずに笑うと、一気に「ウラヌス」を突っ込ませた。



 2006年春。
 コニー社は、デンジャープラネットⅢを発表。改善されたシステムは、前作同様、更なる人々をもう一つの世界へ迎え入れた。
 デンジャープラネットは第一作目より3つのモードを基軸として構成されていた。
 物語の背景に沿って、ミッションクリアを目指す「ストーリー・モード」。文字どおりプレイヤー同士の対戦をジャマされずにするの為の「対戦モード」。
 だが、仮想世界の戦士達をとみに引き付けたのは「バトルロイヤル」。すなわち、自分以外は全て敵である乱戦モードだ。
 そして、個人、又はパートナーと共に戦場に立った者達は、時に好敵手となり、時に戦友となり、この仮想世界での人間関係をもう一つの現実として受け入れていった。


『デンジャープラネットⅢ、第2バトルロイヤルが終了いたしました。筐体付近のお客様は、白線の外までお下がりください』
 場内アナウンスが響く。

「ちっ」

 多恵香は舌打ちすると未練を断ちきるかのように、「TOWER」より排出された筐体から、勢いをつけて立ち上がった。
 ヘルメットを取ると、絡まった行く筋かの髪が流れ落ち、顔が露になる。充分に、いや、充分以上に美人と言える顔立ちだが、可愛いと称する者は皆無だろう。クールビューティーと言う言葉がしっくり来る。女性として魅力的なスタイルを、スリムジーンズと淡い水色のブラウスに包みこみ、ヘルメットを抱えている姿は奇妙だが、まぁここでは、そう珍しい組み合わせでは、無いとも言える。
 多恵香は、切れ長の目を一瞬背後に向けると、何事も無かったかのようにカウンターへと向かった。



THE DENGER PLANETS Ⅲ

WINNER
PALADIN and JUSTICE

IN KAWAGOE

DEGGER



 プロジェクターに燦然と表示されている名は、多恵香のパイロットネーム「TEN」では無い。

「おつかれさん」

 溜め息を吐きながらカウンターにもたれる多恵香の目の前に、冷えたドリンクが置かれた。この店のカウンターはまるで“バー”のように高めの椅子が、飲食物を販売するカウンターの前に並んでいる。店長の言葉を信じるならば、イングランドの方にあるジュースバーを意識して作ったと言う事になる。

「おしかったねぇ。本当にどっちが勝ってもおかしくないバトルだったよ」

 聖が、多恵香のエントリーカードを返しながら笑った。
 このコニーパレス鶴ヶ島駅前店の若き店長、彼神 聖(かのがみ せい)は多恵香の幼なじみ・・・・と言うにはかなり年がはなれており、聖の方が10歳年上になる。とはいえ、多恵香が生まれて以来の付き合いと言って良く、本当の兄妹のように育った。何せ、親と一緒に過ごした時間より彼と過ごした時間の方が多いぐらいだ。
 奏者である多恵香の両親は、仕事で遠出する度に彼神家に娘を預けていったし、そうでない時も小さかった多恵香は、聖にくっついてまわっていたらしい。むしろ血が繋がっていないがゆえに、普通の兄妹より仲がいい。
 今でも多恵香の数少ない理解者であり、甘えられる優しいお兄ちゃんでもある。
 ただし、人が悪い。

「あ、それと今のバトルはベストバトルリプレイで使わせてもらうから」

 多恵香がドリンクに口をつけるのを見計らって、ふと思い出したように笑顔で付け加える。多恵香をからかってるのは間違いない。
 どうやら今のドリンクは、その代わりのサービスだったらしい。

「・・・今の無様な負け方が、ベストバトル?」

 このやろ~と言う言葉を頭の奥底に沈めて、それでも不貞腐れたように聖に目をやる。

「う~ん。では多恵ちゃんの心情をおもんばかって、負け方以外がベストバトルとしておこう」

 とっさに手が出そうになるのを、自分では脅威的だと自負できる自制心でなんとか押える。相手の武器の殆どを破壊し、ほぼ勝ってたバトルを『体当たり』を避けそこねて負けたものだから、からかわれているとわかっていても言い返せない。
 多恵香は一度、聖を睨みつけてから、ぷいっと視線をそらして、ストローに口をつける。

 TENこと天野多恵香も、PALADINもこの17圏きってのVPのパイロットだ。高機動軽量級の「ULANUS」を駆りヒット&ウェイを得意とするTENと、高出力重量級の「JUSTICE」を駆りオールレンジでの射撃戦を得意とするPALADINは、この圏でも双璧をなすパイロットである。
 もっとも、さっきのような負け方をしていては、PALADINの方がパイロットとしての格が上だと言われたとしても何も言い返せない。
 それがわかるだけに、最後の最後で気を抜いた自分に腹が立つ。考えれば考えるだけブルーになっていく思考の重さに耐えきれず、多恵香はカウンターに突っ伏した。

「ほらほら、そんなの処で落ち込まれてたら仕事のジャマだって」

 その様子を見ていた聖が、苦笑しながら沈みきった多恵香に声をかけるが、多恵香は、故意に邪魔してやろうとでも思っているのか突っ伏したまま、顔を上げようともしない。

「まったく、おごってあげるからストーリーモードで遊んでおいで」

 横に置いてあった多恵香のヘルメットを軽く叩くと、まだカウンターに出しっぱなしになっていたエントリーカードをもう一度機械に通す。

「なに? 新しいの出来たの?」

 ガバッっと多恵香が飛び起きる。

「まだパワーバランスも見ていないけどね」

 レンタルVPのディスクで軽く多恵香の目の前で揺らす。

「やる?」
「うん!」
「じゃあ、3番が空いてるから準備しておいで」

 レンタルVPのディスクを受け取って、嬉々として走って行く妹分の後ろ姿を、微笑んで見送ると、聖はストーリーモードの設定を始めた。


─── 登録確認 312-SA0032 タエカ・アマノ ───

─── ヘルメット及びシートベルトを着用してください ───

─── 着用無き場合 すべての操縦システムは作動しません ───

 TENの目の前のディスプレイにVPのCGが描かれる。
「ティターニア」
クララベル、マリアベルと続いた女性方のシルエットを持つVPシリーズの3機の後継機の一つだ。デンジャープラネットの3へのバージョンアップに合わせて発売された、汎用型の「アニスベル」、白兵戦能力に重点が置かれた「ヴォルキュリア」。そして、無重力空間での機動性に重点を置かれたこの「ティターニア」。「ウラヌス」のベースとなったVPで、背中に生えた4枚の羽状の姿勢制御スラスターが特長的だ。もっともそのスラスターに容量を取られすぎて、容量の余裕、攻撃力、防御力、機動力のバランスが、あまりにもピーキーになりすぎ、並ぐらいの腕では扱いかねると言う厄介なしろものだ。
 今では、カプリコーンと並んで、マニア向けの非情にバランスの悪いVPの代表作と化してしまっている。

─── 今回の任務を伝える ───

 ストーリーモードはミッション式だ。与えられた任務を制限時間内にこなせばミッションクリアのポイントがパイロットランクに加算される事になる。もっとも微々たる物ではあるし、普通ならBランクのパイロットが、危なげなくクリアできるレベルでしかない。

─── 革命軍が集結を始めた。場所は資源衛星 OUE6683-543 ───

─── 彼らは前もって準備をしてきたらしく ───

─── すでにその近辺は要塞化されている ───

─── 状況は切迫しているのだ ───

─── さて、君の任務だが、革命軍が集結を終える前に ───

─── 全要塞機能を麻痺させる事にある ───

─── 方法は君に一任しよう ───

─── 困難な任務だが君ならば成し遂げられると信じている ───

─── 作戦の予定所用時間は30分だ 任務成功を祈る ───


「・・・なんか無茶苦茶、容赦の無いミッションじゃない?」

 無言。カウンターからモニターしてるはずだが、聖からの返事はない。

────── GOOD LUCK! ──────

 もったいぶるように、ハッチがゆっくりと開く。開ききった目の前に広がるのは、岩塊が漂う宇宙空間だ。かなり遠くに惑星と衛星らしき星が見える所を見ると、衛星はラグランジュポイントのどこかにあると言う設定なのだろう。
 レーダーには、すでに十数機の反応が、かなり近くにもでている。普通のストーリーモードでは、大抵レンジ外から接近してくるので、いきなりこんな近くに敵機が居る、無茶な設定のものは無い。個人の製作したミッションならではの難易度とも言えるだろう。
 本来、ミッションは、必要な情報・作戦・等々を選択してプログラム化しただけのものであり、それを動かすのはマスターシステムだ。しかし、ミッションのデータは個々のコニーパレスでも管理しており、ある程度以上の技術力があれば作成する事もできる。もちろん勝手にやって良いわけではないが、コニー社は、希望するコニーパレスの従業員や、筐体を持つサードパーティ各社の社員には、講座を開いて、その手の技術を教えている。この講座にでて終了証を貰った者が「ミッションメーカー」と言われ、ストーリーモードのミッションを自作する権限を持つ事になる。店によって、他では見られないミッションを多数取り揃えていたりもするのは、このような理由からだ。
 当然、聖はこの資格を持っているし、この鶴ヶ島駅前店も、「ストーリーモード」の愛好家の中では結構な老舗として知られていたりする。

 レーダーに、数十にのぼる小さい光点が、比較的近くにいるVPを現す光点から分離する。LRM──長距離ミサイル──の一斉射撃が「ティターニア」を襲う。それを、あるものは打ち落とし、あるものは避ける。

「さてと憂さ晴らしに付き合ってもらいましょうか!」

 LRMを処理し終わる頃にやっと見え始めた敵機達に、TENが明るい声で気合いを入れる。

 「ティターニア」が急加速し、すれ違いざまにグレネードをを敵VPに叩きこむ。明るめの青と白に塗装されていた「ニューグレイシャー」は、その一撃をまともに食らい、閃光と共に一輪の華と化す。
 TENは、その結果を確かめもせずに、「ティターニア」を左前方の集団に突っ込ませる。敵もすぐさま厚い弾幕がはるが、それをあざ笑うかのように、白い航跡が縦横無尽に飛び交い、1つまた1つと、VPの居た場所に、紅の花が咲く。「ティターニア」は、宇宙という限定されない広大なフィールドを、自由自在に駆け巡っていた。
 よく見れば、「ティターニア」の背面にX字上に位置する羽の先にある球状の部分から、たびたび青白い光が出てティターニアの姿勢を変更していくのがわかる。それが「全方位姿勢制御スラスター」。通称でバタフライスラスターと呼ばれるものだ。
 もっとも、非常に大量の容量を食う為、カスタムVPでバタフライを使っている者はほとんど見掛けないし、レディメイドVPでもティターニアにしか装備されてない。
 「カスタム機なみの機動力を持ったVP」と言うのを売り文句に、ほとんどカスタムしないプレイヤーや、特異なスラスターに興味をもったカスタムマニア達に、高い前評判を得たが、根本的な出力不足と、容量をスラスターに食われたがゆえの改造自由度の低さ、外観にこだわったがゆえのあまりにも薄い装甲、という三つの理由により、早々に「不人気機」となってしまった。その美しいシルエットも最近ではほとんど見掛ける事がない。
 ただし、そんな「ティターニア」も、宇宙空間や重力が0.1G以下のフィールドでは、余剰容量を出力につぎ込むだけで、非常に強力なVPとなりえる。低重力下と言う状況が、出力不足で機能しきれなかった“圧倒的とも言える機動力”を引き出し、装甲の薄さを完全にカバーしきれてしまうのだ。
 あくまでも、パイロットに“それなりの腕があれば”と言うことではあるが・・・。

 余談ではあるが、鶴ヶ島店で借りる事ができるレンタルVPは総て「改」という文字がついている。つまりは、純粋なレディメイドVPではないのだ。「ティターニア改」をはじめ、「ボルゾイ改」「ニューグレイシャー改」「アニスベル改」等々。
 それは店長である聖の方針であり、週一回づつ、初心者向けの『VPカスタム講座』や、『カスタム相談室』なども開催している。
 販売している商品まではさすがにいじってはいないが、レンタルVPの「改」へ自動でヴァージョンアップしてくれるソフトと、どう改造して「改」にしてあるかをくわしく記入してある、マニュアルをサービスで進呈している為、程々の、────コニーパレスだけに限定すればかなりの────売り上げを維持している。ちなみにソフトもマニュアルも聖のお手製なので支出は0に近い。
 コニー本社の方針で、コニーパレスでは定価でしか販売できないので、そうでもしなければほとんど売れないのだ。

 店内のディスプレイに映し出されたその戦いを、何人かの客が、見上げている。外からディスプレイ越しに見るぶんには“ただ”駆け巡っているように見えるTENの「ティターニア改」が、計算された動きをしている事に、気が付く人は居るだろうか? 良く見れば「ティターニア改」は常に足下からの攻撃を受けないように位置を変え続けている。その辺は腐ってもSAランク、TENのパイロットとしての腕が一流であるのは言うまでもないし、彼女自身も、どんなVPに乗っていても、そう簡単に負けない自信はある。今回の「ティターニア改」のように慣れている機体であれば、万に一つも負けはしない。
 そう。VPの性能が低くても、慣れたVPならば、なんとでも出来るだけの腕をTENは持っているのだ。

 ・・・これは多恵香自身は気が付いていない事なのだが、実のところ「ウラヌス」はたいして強いVPではない。むしろ弱い部類に入るVPだ。外から見ている聖などはその事に気が付いてはいるのだが、しょせん遊びなのだからと彼女の自由にさせている。
 結構、長いこと使っていながら、彼女がその事実に気が付かなかったのには、それなりの訳がある。それは、TENが「ウラヌス」に乗っていて苦も無く捻られる機会が無かったからだ。実際に“TENが乗ったウラヌス”は、決して弱くない。そればかりか、この界隈では、かなり強い部類にはいるVPだろう。しかし、それは「ウラヌス」のピーキーな能力を、TENが使えているからである。戦闘方法のコンセプトに性が合っているからと言ってもよい。
 VPが性に合っていると言うのは強さには関係ないように思われがちだが、実際にパイロットの能力を限界まで引き出すには“性”と言うのは非常に大事なものになる。乗り手が、ただ単に性にあっているだけのVPを、他のVPよりも「強い」と感じることは、比較的ままあるし、実際に対戦でも、強い事は変わらない。ただ、実際に数値として能力を調べて見れば、なぜこのVPの方が強いのか、製作者は頭をかかえる事だろう。
 そして「ティターニア」もまた「ウラヌス」と同じく、彼女の性に合っているVPの一つであり、今この場において非常に強力なVPと化しているのだ。

「・・・一任か・・・まぁ妥当な所で司令部の破壊。裏を見て司令部にエネルギーを供給している動力部の破壊かな? でも、聖兄の事だから絶対に裏の裏があるだろうし・・・」

 迫りくる敵VPを次々とさばきながら、TENは頭の中で、クリアする為の方法をあれこれとシミュレートする。
 聖のシナリオはかならずどこかに道がある。いや、聖の作ったものに限らずともストーリーモードのシナリオは必ずクリアできるようなっている。そうでなければゲームとしては成り立たないのだから当然と言えば当然だ。ただし、聖の作ったシナリオは難易度が非常に高い。彼は、ただ突っ込んで行って力ずくでクリアする事ができるシナリオなど、絶対に作らない。
 前作のシナリオは、TENは一回でクリアしてる。非常に難しくはあったが、聖の性格からシナリオの穴を読んだのが大当たりだったからだ。

「よし、まずはセキュリティシステムの破壊からだ」

 動力部を守るセキュリティシステムのコントロールを第一目標に定めるころには、第一波のVP部隊はあらかた壊滅していた。TENは、残りをさっさと片付けると司令機だと思われるニューグレイシャーの残骸に近づく。目当ては残骸の中に浮かぶ、データブロックだ。
 基本的にストーリモードではこの手の形で情報が与えられる。これを手に入れれば、以後はモニターに写る物を逐一、それが何であるかを表示してくれるようになる。これはボタン一つで表示しないようにする事も可能だ。ちなみにデータブロックを壊す事はできないので、指揮官機を倒すのに苦労する必要はない。
 データブロックを手にいれると、TENは「ティターニア改」を要塞に向けた。望遠モードのカメラアイが、要塞の姿を捉える。どうやら、資源惑星の周囲に戦闘衛星で取り囲むタイプのようだ、そのうちの配置された一つがセキュリティのコントロールだとしめされている。TENはボタンで表示を消すと、迷わずに「ティターニア改」を、その戦闘衛星に向かわせた。


「いやぁ惜しかったねぇ」
「うるさい!」

 聖に満面の笑みで迎えられた多恵香は、その言葉に怒鳴りかえす。
 セキュリティを狙ったのは当りだった。ただ全部同型の戦闘衛星で構築された防衛線は、それ自体が一つのネットワークになっていたのだ。司令衛星が攻撃を受けたら、攻撃を受けていない他の衛星に全管理情報を転送して、司令衛星を変更する。ただ、情報転送の間はセキュリティレベルはかなり落ちる。
 最初に、司令衛星に攻撃が命中したときに、確かに敵の応戦が弱まったのだ。そして、それを効いているのだと思い込んだのが不味かった。一気にたたみ掛け、司令衛星はその攻撃により木っ端微塵に砕け散ったのだが、ホッと一息ついたところで、停止したはずのセキュリティの一斉攻撃が、「ティターニア改」を襲ったのだ。いかに「改」でTENの腕があってもどうしようもない。最後にTENが見たのは、あわてて表示させたデータブロックの文字情報に、新しくコントロールになった戦闘衛星とその事を示す表示。事態を悟った時にはもう遅かった。

「そんなに怒らないでよ」
「あんなのあり!?」

 コクピットから降りてくるやいなや、多恵香が聖にかみつく。

「だからパワーバランスを取ってないって言っただろうに」

 聖の言いように、多恵香は不貞腐れたまま、そっぽを向いてしまった。聖の言い分は正しいのだが、多恵香にして見れば言い分けにしか聞こえない。
 聖は、苦笑しながら肩をすくめると、ポケットからメモを取りだす。

「とりあえず、衛星の戦闘レベルと、対衛星戦の時のVPの数は減らさなきゃ無理か」

 多恵香は、今の結果をあれこれとメモする聖を、睨みつけるが、聖の方はメモするのに集中していて気がつかない。
 暫く睨みつけていたが、何時までたっても気づかないので、あきらめたように溜め息をつく。その時、ふとコニーパレスの奥の方に目がいったのは、偶然だったのだろうか?
 今日は『カスタム相談室』の日だったらしい。女性スタッフの一人が、練習用筐体のモニターの一つをノートパソコンに接続して、回りに集まったちびっこ達の質問に答えている姿が目に入る。容姿まではわからないが、あのやかましいちびっこ達の質問にやさしく笑いながら受け答えをしている様子を見るに、もの静かなタイプに見える。後ろから長い髪を引っ張られたらしい。髪の毛を前にまわしながら、引っ張った子を軽く怒っっている。
 ここのスタッフは全員知っている────たいした人数がいる分けではない────が、その子は多恵香が始めて見るスタッフだ。

「ねぇ、あの子新しいバイト?」

 遠目に自分と同じぐらいの年かなと思いながら、ちびっこのエントリーを受け付け終わった、聖に尋ねる。

「ああ、“カスタム相談室”専門のね。綾川 五月。16歳って言ってたかな? ちょうど多恵ちゃんの一学年下のはずだよ」

 聖は、多恵香が、多少なりとも同世代の少女に興味を待ったのが嬉しいらしく、聴いていない事まで説明していたが、多恵香が気になったのはその少女の幸せそうな笑顔。今も、殆ど一人暮しをしている多恵香には、本当に幸せそうな同世代と言うのは、もう一人の別の可能性を通ってきた自分のようなものだ。
 見ていると妬みの心が膨れ上がってきそうで、多恵香は聖に挨拶すると、早々にコニーパレスから駆け出した。
 悲しげな聖の表情と、駆け出した多恵香を不思議そうに見る五月には気が付かずに。


To Be Continued!


あとがき
 修正版の、第一話をお送りします。
 ・・・・結構辛いものがありました。見なおしてたら、誤植や、文章的に変な所が、出てくる出てくる(苦笑)
 間違った用語の使い方も「多々」あると思うので、お気づきの方はご連絡ください。
 ちなみにこの話はエンターブレインのコミックビームで連載されていた「ブレイクエイジ」の世界観を使った外伝(?)小説です。
「専門用語がわからん」と言う方は、「店長の専門用語講座」でも見てください。それでも分からなければ、そちらの本をさがして読むか、コニーパレス新屋敷店にでも見に行くか、メールにてご連絡を。専門用語講座で対応させていただきます(笑)
次回では、素直じゃない普段の多恵香ちゃん登場のお話です(笑)
 ともあれ、第二話でお会いしましょう♪
 なお、ご意見・ご感想・誤字脱字の発見はこちら、もしくは感想BBSにどうぞ。

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