ブレイク-エイジ外伝
     虚構世界の真実


  Ver5.2  「真昼の決闘」


 多恵香が、学校の屋上でうとうとしているその頃。



「うふふふふふふ♪ お姉さんに挑戦だなんて大胆な子ねぇ」
「じゃかぁしい! それより、なんじゃそのVPは!」
 TAKESHIは、“サウザンカイザー”のコクピットの中で、盛大に騒いでいた。
 平日の昼間と言う、比較的すいている時間帯の対戦モード。相手のパイロットは間違いなくPALADINであるが、“サウザンカイザー”の前に立つVPは、ジャスティスではない。
「なにって見ればわかるでしょうVPよ、VP。そぁんな事もわからないの?」
 グレートソードとショートシールドを2枚持った四本腕のVPを駆っているパイロットから馬鹿にしたような声が響く。
「だれがそんな事を聞いとるかい! なぜ“JUSTICE”に乗っとらんのかと聞いとるんや!」
「だって“ジャスティス”は今調整中なんだもん」
 相手のパイロットの簡潔な現状説明に、一瞬TAKESHIが固まる。
「うがぁ! 俺様の常勝伝説の礎が調整中だとぉ!」
「残念だったねぇ。あははははは♪」
 PALADINの楽しそうな笑い声がオープン回線でこだまする。
「“ジャスティス”が出てこなきゃ貴様など相手にならん。とっとと、うせい!」
「あ、そぉゆぅ事いう。あんた全損決定」
 TAKESHIの啖呵に少し気を悪くしたらしい。その言葉と共に四本腕の重装VPはゆっくりと動きだした。
「しゃらくさい! 消し炭にしたるわ!!」
 応じて、“サウザンカイザー”は、猛然とスラスターを吹かせ、天高く飛びあがる。飛行ではなく跳躍のようだが、その高度はかなり高い。そしてジャンプの頂点あたりで、迫り来るPALADINの駆る、名もしらぬVPの方を向き、身体を丸める。
「とっとと往生せいやぁ!!」
 突如“サウザンカイザー”を覆う外装が展開し、全身の重装甲に見えたものに網の目のように穴が開く。そして、数えるのもいやになるほどのマイクロミサイルが一斉に発射された。
「ええ!? うそぉ!?」
初めてPALADINのあせった声を聴き、にんまりとほそを笑むTAKESHI。
 百数十発のマイクロミサイルは雨霰と四本腕のVPに襲いかかり、瞬く間に爆煙がその全身を覆い隠した。
「く・・・くっ、くはははははは!! だから言っただろうが“ジャスティス”の無い貴様ごときでは役不足だと!」
 “サウザンカイザー”はいまだ立ちこめる煙の周辺に下り立つ。
 どうやらTAKESHIも先日の一件に懲りて、ミサイルをむき出しにするのはやめたようだ。今の“サウザンカイザー”はミサイルを全て薄い装甲で覆いかくし、ほぼ全身を覆うマント状の装甲を装備していた。アサルトライフルなどの大型火器にはまったく役に立たないだろうが、遠距離からの小口径のバルカンやショットガンぐらいであれば充分弾薬への直撃はさけられる。
 一度発射した後はむき出しになってしまうが、この火力なら一射目を耐えられはしないとふんだのだろう。まさに、先手必勝、百撃必殺。完全に対戦モード専用とも言っていい。
 そして、その計算はあながち間違いでは無かった。
 突如、爆煙を切り裂き飛び出し四本の腕でしがみついてきたVPは、殆ど全部位の装甲が削れ、2枚のショートシールドもグレートソードも失っていたのだから。
「まったく、全身ミサイルの針鼠みたいな機体がいるって話はきいてたけど、それって君だったのか。やぁ失敗、失敗」
 PALADINが楽しそうに笑う。
「おんどれ、何とりついてるんや。吹き飛ばされたいか!」
 TAKESHIは、“サウザンカイザー”に振りほどかせようと試みるが、パワーは圧倒的に相手の方が上のようだ。
「この距離でミサイル撃ったら自滅だよ少年」
 小悪魔がからかうような口調のPALADINの指摘に、TAKESHIは握り締めた手をわなわなと震わせている。
「引き分けでも常勝にはなれないもんねぇ」
「てめぇ・・・・」
 あきらかに相手はTAKESHIをからかって楽しんでいるようだ。
「そうそう、言い忘れてた。このVPね、“OUKA”って言うの」
 TAKESHIが、あまりに唐突な話の切り替えに、目を白黒させる。
「語源は、太平洋戦争時代の、大日本帝国軍の最後の爆弾から取ったんだって」
 話の内容が浸透してくるにつれ、だんだんと熱くなっていた頭がさめてくるのを感じながら、TAKESHIはいやな思いに囚われていた。
 “OUKA”という名は、聞いたことがある。ただ、爆弾ではなく戦闘機だったと記憶している。ただ、その機体は、爆弾と称しても何ら問題が無い機体であった。その点が、TAKESHIにあせりをもたらす。
「まさか・・・・」
「常勝伝説はきっちり阻んであげるよ」
 PALADINは通信の向こうで慌てているであろうTAKESHIを想像してにんまりと笑う。そして、おもむろにファンクションキーの一つを打つ。
「なっなんやこれは!」
 突如として“OUKA”の出力があがった。
 4本の腕が常識をはるかに越えた力で“サウザンカイザー”を圧迫する。
「私の悪口を言う人は、不幸になるのよ」
 PALADINの言葉が回線に響く。
「グッバイ」
 “OUKA”は、抱きついた状態で燃え上がり、“サウザンカイザー”の残弾の誘爆を引き起こして、共に大爆発を起して砕けちった。

「んーっ! あぁ面白かった」
 真光寺真耶(しんこうじ・まや)は、大きく身体を伸ばすと軽快な足取りでカウンターに戻ってきた。
「はい、おつかれさま。ところで今日は旦那さんは一緒じゃないんですか?」
 坂戸店店長、想樹柳一郎(そうき・りゅういちろう)は、ご機嫌で戻ってきた真耶にエントリーカードを返しながら、尋ねかけた。
「流(りゅう)ちゃんは、今日は出張で金沢まで行ってるの!」
 真耶は、エントリーカードを受け取りながら元気良く答える。これでも当年とって28・・のはずだ。まだここがコニーパレスになる前からの常連の子供達は、いつしか、大人になって結婚した。
 もっともいくら大きくなっても、柳一郎に取ってはみんな可愛い子供のようなものだ。そして、この子達は夫婦になってからも変わらずに、ちょくちょくコニーパレスに変わったここに、訪れる。
「出張って・・・・“桜花”って言ったら流君の封印作でしょ? あいつが使用を許可するわけは無いと思ってましたけど、勝手に持ち出したんですか?」
「え・・・・ま、まさかちゃんと断ったわよ」
「はぁそうですか・・・」
「あ、信じてない。ほんとなんだからね!」
 へそを曲げて怒る真耶の様子に、柳一郎は苦笑した。
 “流の封印作”は、ある意味マナーを無視して特定の力を与えたものだ。作ってみたものの、戦った相手を明らかに不快にするような能力ゆえ、見知らぬ人との対戦などに使ったりする事はまずない。だいたい名前を聞いただけで人を不快にする事すらある。たとえどんな断り方をしても流が許可する事はないだろう。
(たぶん電話で断った後、答えを聞かずに切ったとかそんなところだろうな)
 小さいころから二人を知っている柳一郎には、その様子が手に取るように分かる。
「・・・まぁいいですけどね。でも、きちんと謝っておいた方がいいとは思いますよ」
「・・・・・」
 真耶は、その言葉を無視したかの様に見えた。だが、本当はちゃんと聞いてることを柳一郎には良く分かっている。こういう所は昔から全然変わっていない。だてに長い間付き合ってきたわけではないのだ。
「おじさん。次のバトロイ、エントリーねぇ」
 学校帰りの子供たちが、柳一郎を呼ぶ。
「まぁよく考えればわかるはずですよ」
 そう言葉を残すと、柳一郎は真耶をその場に残し、エントリーの受付の為に子供達の方へと行ってしまった。
「ちぇ・・・」
 柳一郎が、離れたのを見計らって、真耶は一つ溜め息を付いた。そして、そのまま少し考え込む。

『ただいまより、デンジャー・プラネット3第一バトルロイヤルを行います。エントリープレイヤーは、至急指定コクピットにお入りください』

「あ、私も入るからよろしく♪」
 コニーパレス内に案内の放送が流れると、真耶は考えるのやめて立ち上がった。
「結論はでましたか?」
「とりあえず、やりながら考える事にした」
 柳一郎の問に、あっけらかんと答える。
「ねぇ何番?」
 すこし沈黙してしまった柳一郎に真耶が問いかける。
「あ、4番です」
 少し、慌てる柳一郎からコクピットのナンバーを聞くと、真耶は急いで“TOWER”の方に走っていった。
「・・・・ほんとに変わってませんねぇ」
 その後ろ姿を見ながら呆れたように溜め息を付くと、柳一郎は、止まっていた仕事を片付けはじめた。


To Be Continued!


あとがき
 さて、サウザンカイザーの活躍(?)いかがだったでしょうか。どうも彼が出てくるとまともな勝負を思いつけないで困ったり。

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