ブレイク-エイジ外伝
     虚構世界の真実


  Ver7.2  「舞い降りたる」


 翌週の日曜日。
 この日も、2人の姿はコニーパレスの中にあった。ソファーに並んで座りながら、多恵香は五月の持ってきたハンディーパソコンの画面を食い入るように覗きこんでいる。
 そこに移しだされているのが、五月が持ってきた新たなVPのうちの一機だ。機体の名称は“アンダンテ”。外見から見る限り重装甲、パワー重視のVPだ。
「まだテストということもあって、それぞれ機能を特化したVPをもってきたんですけど」
とは、五月の弁。たしかに彼女が今日持ってきた3機のVPは、全てなんらかの能力が特化されたVPだ。まぁ多恵香に言わせれば、残りの能力が平均的じゃなければ、役にはたたないとの事であるが。

「おぉい、第1バトルロイヤル始まるけど、どうする?」
「あ、はい。エントリーします。多恵香さんはどうします?」
「もちろんエントリーする。とりあえずこれ借りるよ」

 多恵香は“アンダンテ”を手に取ると書き換え機に向かう。五月も、持ってきた諸々の物を聖に預けると、多恵香の後ろにならんだ。今日は2人とも色違いの同じワンピースを着ている。そうして2人ならんでいる様子は、まるで姉妹のようだ。聖などは思っているが、口にだせば多恵香がすねるのがわかっているので見守っているだけに留めている。女の子を眺めながら笑っているなどと言うと見るからに怪しそうだが、実際にはそんな事はない。それが聖と言う人柄なのかどうかは定かではないが。

『ただいまより、デンジャー・プラネット3第一バトルロイヤルを行います。エントリープレイヤは、至急指定のコクピットにお入りください』

 書き換え終えると同時に放送がかかった。それに急かされて2人もコクピットへ急ぐ。

─── 登録確認 312-SA0032 タエカ・アマノ ───

─── ヘルメット及びシートベルトを着用してください ───

─── 着用無き場合 すべての操縦システムは作動しません ───

「そういえばMayは何使うの?」
『見てのお楽しみです♪』
「またそれ?」

 呆れたようにため息をつく。

─── 確認しました ───

─── 本日のフィールドはプロキシマ系第2惑星、砂漠地帯 ───

── 重力0.8G、地雷原有り。快晴。制限時間は30分間です ──

『そうは言っても、まだ試作機だから・・・だから自分で見てみてください。』

────── GOOD LUCK! ──────

 目の前のハッチが開くのを見てTENは、話を打ち切った。ここまでくれば確かに見た方が早い。
 ハッチが完全に開ききるのを待って“アンダンテ”を出撃させる。レーダー反応はすぐそばにあったが。そちらを向いても何もない。センサーは、そのVPの位置に反応して、上向きの矢印を画面上部に表示する。
 “アンダンテ”に上を向けさせる前に“それ”は視界内に降下してきた。

「VU?」
『はい。最新作です』

 降りてきたMAYの駆る機体は、青塗装の平べったくしたロッキードとも言える形状の戦闘機型のVUだ。

「名前は?」
『まだ仮称ですけど、アモルファスといいます』
「アモルファス・・・・語源があるの?」
『なんとなくですけど・・・もしかしたら何かあったのかも」

 そんな取り留めの無い話が出来る程にその場には静寂が満ちている。
 だが、突如その場に、無粋な爆音が割り込んだ。慌てて2人ともレーダーに目をやる。

『・・・どうやら今のは流れ弾のようですね』
「そういやバトロイだったっけ。それじゃそろそろ行く?」
『そうしましょう』

 MAYの返事と共に“アモルファス”は、大空へと舞い上がる。

「そうか、何かに似てると思ったら、剣に似てるんだ・・・」

 その言葉通り、“アモルファス”は一振りの蒼く輝く剣となって、南の方に飛び立って行く。レーダーを見るとその方向に6体のVPが固まっているのがわかる。たぶんさっきの流れ弾もここから飛んできたのだろう。そこが、この場所からは一番近い。
 “アンダンテ”の足下から大量の砂埃がたった。通称スケートと呼ばれる高速機動用のキャタピラが、一気に“アンダンテ”を前方へと押し出した反動だ。
 TENは速度を維持したまま、“アンダンテ”を、蒼き剣の飛び去った、砂丘の向こう側へと向けた。


『へっ鴨がまた出てきたぜ』

 待ち構えていた6機のVPの内の5機が砲火を集中し、なすすべもなくノーマルのボルゾイに被弾していく。

「くそぉ!」

 シェイク状態のコクピットで政文は、3度目の悪夢を覚悟しながらも必死の抵抗をつづけていた。
 高校受験でずっとできなかったデンジャープラネット3。高校に受かった後も、高校の勉強に慣れるまでは、と我慢してやっと今日やれたのだ。それなのに・・・

「くそぉ!」

 政文は、十数回目かの怒声ををあげる。
 突如、周囲を取り囲んでいたはずのVPの一機が爆発した。視界を蒼い色が横切り。それと同時にさらに一体のVPが真っ二つになって爆発四散する。

「え?」

 現実を把握する前に更にもう一機のVPが、ミサイルの直撃を受けて大破する。と同時に、外部音声モニタを介して見知らぬ声が聞こえてきた。

『ノービス相手にポイント稼ごうなんて今時はやらないわよ』
『そんな事じゃいい女に限らず、もてませんよ』

 馬鹿にしたような声がその場に響き渡る。まず間違いなく、この声は女性だろう。レーダーを見ると、今までのVPの光点が一個減り、新たに再出撃したVPの反応が3機分増えているのがわかる。
 レーダーを頼りにその方向を見ると、砂漠用の迷彩色に塗装された重量級のフルカスタムVPが一機。そして、その横に蒼く美しく輝くほっそりとしたVUがホバリングしていた。

『誰かは知らないけど、このゾーンでそういう事やる人は、寄ってたかってお仕置きされるんだって事、きっちりと教えてあげるよ』

 その言葉と共に、フルカスタムVPの両腕が、それぞれ別のVPに向けてあげられる。そして有無を言わさずに、両腕にそれぞれ2機ずつマウントされた大口径ガトリング砲が火をふいた。
 狙われたカスタムボルゾイとニューグレイシャーが、あっという間に蜂の巣になり爆発した。だが、そのVPはそれを確認するより早く、他のVPを薙ぐように火線を移動させている。
 そのVPの両肩から、こんどは10発程のマイクロミサイルが一斉に発射される。4機の大口径ガトリング砲から発射される徹甲弾とミサイルとが次々と敵VPを引き裂きつづけ、そのVPはたった一機でありながらも、まったく他のVPをよせつけない。
 そして、政文に悪夢を見せつづけた5機のVPは、瞬く間に駆逐されていった。
 その様子は、政文に自分がいかに弱いかを認識させると同時に、いかに強くなれるかをもその心にやきつけた。
 政文は、リセットしてコクピットを出ると、そのままコニーパレスを後にした。 目指すはパーツショップ。政文の頭の中には自分自身のフルカスタムVPの構想が徐々に形となりつつあった。


「ねぇ、あのやられてた人は? もしかして私いっしょにふっとばした?」
『いえ、さっきリセットしていきましたよ』

 冷や汗をかきながら尋ねるTENに、MAYが笑いながら答える。回線のモードははオープンからパーソナルに切り替わっており、タッグパートナーにしか声は届かない。

『でも“アンダンテ”ってこんなに強かったんですね、ビックリしました・・・』
「ちょっとまてぇい」

 暴れまわる“アンダンテ”を離れて見ていたMAYが誉めるのを、TENが途中で唐突に遮った。

「これって貴女が作ったVPよね」
『はいそうですけど?』
「なんか乗った事が無いって言ってるように聞こえたんだけど」
『ええ、使った事無いです。私、バトルロイヤルって殆どやりませんから』

 TENはそれを聞いて黙り込んだ。MAYの言い分を深読みすれば、モルモットにしたとも取れる。が、本当に他意はないのかも知れない。MAYはMAYで、納得したと思ったのか、やはり黙り込んだままだ。そして、

 その一瞬の気のゆるみが葬送曲の前奏となった。

 突如、紅い影がディスプレイを横切り、それと同時に“アンダンテ”は、砂丘へと叩きつけられた。コクピット内はシェイク状態になり、とてつもない振動がTENを襲う。
 振動が収まってから、ディスプレイに表示された“アンダンテ”のフレームCGに目をやると、右腕が赤く点滅してその部分が無くなった事を教えている。

『光も闇は紅く染まり、荒廃と屍が我を呼ぶ。気はすんだかい、お嬢ちゃん?』

 そんな嘲笑が響くと同時に目の前に巨大な物体が落下し、あたり一面に大量の砂を巻き上げた。
 しばしの間視界が閉ざされる。
 そして砂が収まるにつれて白い翼を持った真紅のVPがあらわれた。右手には地面に突き刺した槍に手をかけ悠然とした姿を表す。

『貴様等ごときが、この“紅の破壊天使ヴァルガー”の相手になれると本気で思ったのか!?』

 “ヴァルガー”は、手にした槍で足下に散らばった“それ”を“アンダンテ”に向けて弾き飛ばした。
 TENが最後に見た物は、飛んできた蒼い装甲をもったVPの破片と、それごと自分を貫き通した真紅の槍。

──── TIME OUT ────


「多恵香さん・・・」

 コクピットから出てきた多恵香をすでに出てきていた五月が迎える。
 結果は引き分け。でも事実上は敗北と同じだ。

「・・・あははははは、ごめんねぇ結局全損にされちゃった」
「多恵香さん・・・私、さっきのVPの名前聞いた事があります」
「え!?」
「“ヴァルガー” 正馬店のエースパイロット、龍神 雷の駆る紅の天使」
「紅の天使・・・一度顔を見てやるのも悪くはないわね」

 表情は笑っているが、目は多恵香の怒りを映して静かに輝く。

「五月はどうする?」
「ご一緒します。多分理由は、多恵香さんとは別ですけど」
「そう、まぁいいわ。どちらにしろ目的はおなじなんだしね」

 多恵香は、頭上のディスプレイを見上げて、そこに映る“ヴァルガー”を、強い視線で睨みつけた。



To Be Continued!


あとがき
 さぁ今回初登場、斎雅 政文(さいが まさふみ)君の登場です。・・・・・でも、人気が無ければもうでてきません(爆)
 今回やっと龍神 雷の名を出す事ができました。これでとりあえず一安心です。しばらくは恨みをひきうけてもらいましょう(笑) って怨まれるのは私か? 龍神雷さんごめんねぇ(苦笑)

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