『ノービス相手にポイント稼ごうなんて今時はやらないわよ』
『そんな事じゃいい女に限らず、もてませんよ』

 フルカスタムVPの両腕が、それぞれ別のVPに向けてあげられる。そして有無を言わさずに、両腕にそれぞれ2機ずつマウントされた大口径ガトリング砲が火をふいた。
 狙われたカスタムボルゾイとニューグレイシャーが、あっという間に蜂の巣になり爆発した。だが、そのVPはそれを確認するより早く、他のVPを薙ぐように火線を移動させている。
 そのVPの両肩から、こんどは10発程のマイクロミサイルが一斉に発射される。4機の大口径ガトリング砲から発射される徹甲弾とミサイルとが次々と敵VPを引き裂きつづけ、そのVPはたった一機でありながらも、まったく他のVPをよせつけない。

 自分のVPの中からその様子を見ながら、俺はその戦いに見とれていた。彼女達のようなパイロットを、戦乙女とでも呼ぶのだろうか。だとしたら、俺は、それに追いつきたい……。
 俺は、リセットして虚構世界を後にした。



 虚構世界の真実外伝

 BASIC Player's Story

  第0.5話 「戦乙女」




 まず右足を展開する。ブレードをより強力な物に、装甲は厚く。各関節のモーターは、よりパワーのあるものに交換。閉じる。
 左足も同様に。
 右手を展開する。モータをパワーのある物に取替え、フレームを少し太めに。マニピュレータハンドは殴る事もできる物、やはり装甲は厚くして、閉じる。
 左手も同様。
 胴体を展開。ジェネレータを強力な物にして、装甲を特に厚くする。
 裏返して背面を向け、バックパックスラスターを展開。スラスターの推力が大きい物に変え、閉じる。
 頭部は、索敵能力の高い横に広がった大きめの物に交換。
 脚部に3連装ミサイルポットと、スモークディスチャージャーを装備。持つ武器は、二連装ハンドキャノンを両手に持たせる。
 これで完成。

 ブー ブー ブー

「げ、な、何?」
 多田政文は、慌てて音を消そうとするが、その前にエラー報告のアラームは勝手に止まる。
「あ、わりぃ、何でもない。あははは……」
 周囲の視線に愛想笑いを返すと、政文は、改めてハンディパソコンに向かう。
「Error? 何のエラーだってんだよまったく……」
 月曜の昼休み。
 昼食をパンで済ませると、政文は、昨日購入したエディターで、早速VPのカスタムを始めていた。

 高校受験でずっとできなかったデンジャープラネット3。高校に受かった後も、高校の勉強に慣れるまでは、と我慢してやっと昨日やれたのだが、結果は惨敗。いきなり初心者狩りに会い、僅かなプライドと憧れごと全損にされてしまったのだ。
 もしも、あそこで彼女らが、助けてくれなかったら、政文はDPを嫌いになっていたかも知れない。TENともう一人。残念ながらもう一人のパイロット名はわからなかったが、時間切れ判定で勝利を収めたTENの名だけはわかっている。このエディタと新しいVPを購入した、VPShopの店員が教えてくれた所によると、TENは、このゾーンで屈指の実力者の一人との事、そして政文の目標が定まったわけだが……。

「なんで、エラーが出るんだ?」
「どうしたの政文ちゃん」
 慌てて顔を上げると、いつのまに来たのか、少女が政文を見下ろしていた。
「なんだ、真奈か」
 政文は、真っ向から見詰め合ってしまった少女が、幼馴染の少女「真奈」だと知ると、ため息をついて、視線をハンディパソコンに戻す。
「何をやってるの?」
 真奈は、政文の邪魔にならないように、後ろからディスプレイを覗き込む。両端だけ編んでストレートのまま流している髪を片手で抑えるが、手から逃げ切った僅かな髪が、政文の肩に落ちる。
「……! 政文ちゃんデェンジャープラネット始めたの?」
「あぁ、昨日な」
 真奈の言葉に、言葉少なに答える。政文は、一度ポインティングデバイスに手をやったが、真奈が熱心に見ているのに気づき、しばらく待つ。
「すごいVPだね。いつから作ってるの?」
「30分前」
 やはり言葉少なに答えられた言葉に、真奈がしばし体を硬くする。
「……30分前って家で作ったんじゃないの?」
「あぁ。家でやってる時間なくってなぁ。それで学校でやってたんだけど、何か失敗したらしくて、エラーが出てセーブできないんだ」
 そう言って肩を竦めて見せると、政文は、エディタに向きなおる。真奈は、困った顔で暫く様子を見ていたが、意を決したように頷く。
「あ、あのね政文ちゃん」
「……いい加減“ちゃん”づけは止めてくれんかなぁ」
 意を決して話し掛けた真奈に気が付いていないかのように、政文が言葉を挟んだ。真奈は、一瞬だけ沈黙する。
「なんで? 政文ちゃんは、政文ちゃんだよ」
 突然の事に、きょとんとして真奈は、政文の背中を見つめ答える。
「……まぁいいけどな」
 政文は諦めたように呟くと、言葉を継ぐ。
「でなんだ?」
「え?」
 声の最後に“?”が付くのを感じて、政文は顔だけ振り返る。そこには、先ほどと同じように、きょとんとした表情の真奈が、政文を見下ろしている。
「今、話し掛けようとしただろうが」
「あ、えーとね」
 政文があきれたように指摘すると、ようやく思い出したのか、少し口篭もる。
「……もしかして、容量不足じゃないかなぁ?」
「容量不足?」
 改めて、意を決するのに暫く要したようだ。真奈が、恐る恐る言いだすのを聞いて、政文は、反射的に問い返すが、同時に起きた誰かが噴出すような音に、慌てて前を振りかえる。
「あ、良子」
 政文は、真奈の声を背中越しに聞きながら、前の席に座って自分の机の上に突っ伏して笑っている少女を、心底イヤそうな顔で見つめる。高々と結ってポニーテールにしている髪が、机に突っ伏している為に机中に広がっている。
「……やほ。真奈も大変よねぇ、こんな奴の面倒見なきゃならないなんて」
 良子は、顔を上げ普通に真奈に挨拶するが、政文を見ると再び噴出す。
「プ……くくく……あ、あんた……容量不足も知らないので、カスタムなんてやってんの?」
「わるかったな」
 しっかり指差して笑いながら喋る良子に、政文はいきなり殴りつけてやりたい衝動を抑えながら、憮然として答える。
「だいたい……おまえのクラスは隣だろうが」
「だから何? 今は、昼休みじゃん」
 ようやく体を起こすと、良子は笑いながら答える。
 良子が座っている席は、彼女の物ではない。昼休みで席に居ないのを見計らって、政文の前の席にかってに座っているだけだ。
「あのね、VPってデータ容量が決まってるの」
「幾らなんでも、それぐらい俺だって知って……」
 真奈は、本当に困った顔をしている。
「ねぇ、政文ちゃん。そのVP、容量が大きすぎるんじゃないかなぁ?」
 真奈の言葉と共に通り抜けた北風のせいか、一瞬だけ時がとまる。
「……いや、しかしな。こいつはモデルがちゃんと居て、そいつと同じになるように作ってんだ」
「それ、フルカスタムの機体なんじゃないの?」
 暫くして、応えた政文に、良子が追い討ちをかける。
「いや、アリゾナそのまんまだった」
 政文は、しつこく反論するが、良子は今度は見下したように笑っただけだ。

 キーン コーン カーン コーン

「あ、もうこんな時間。急いで戻らなければ、授業が始まってしまいますわ。それでは、ご機嫌よう」
 予鈴を聞いて、更に何か言おうとした政文に機先を制するように席を立つと、良子は、非常にわざとらしい丁寧な言葉で、政文と真奈に挨拶する。
「何が、ご機嫌ようだ。普段は、予鈴で帰ったためしが無いくせに……」
「ふふ、鳴け犬の遠吠えにしか聞こえないわね」
 政文に白い目で見られながら、良子も負けていない。
「悔しかったら、真奈のペルソナでも見て勉強しなおすのね。じゃっまたねぇ」
 良子は、それだけ政文に言い放つと、足取りも軽く教室を出ていった。
「真奈のペルソナ? なんだそりゃ。おまえPSのペルソナとか持ってんの?」
「政文ちゃん……いまどきそんなの覚えてる人、まず居ないよ」
 真奈は、政文のボケに困ったような顔で真面目に応えた。





あとがき

ron「どうも、始めまして、こんにちわ。前が、初めて読んでくれた人用、後が、2回目以降の人用です」
政 文「はじめまして。多田政文です……って、何で俺、こんな所に出てるんだ?」
ron「実は、今回からあとがきを、座談会方式でやろうと思ってね。で、今回の相方は君なわけだ」
政 文「……つまり、あとがき書くのがめんどくさいと」
ron「失礼な。味気ないあとがきを盛り上げる為に、切磋琢磨しているこの私に向かって……」
政 文「で、本音は?」
ron「いや、他の人の見てて楽しそうだったんで」
政 文「…………」
ron「………………」
政 文「まぁ、いいか。じゃぁあとがきが書けないからと言うのでは無いんだな?」
ron「今までちゃんと書いてるだろうに。私は、意味の無い文を書くのは得意だぞ」
政 文「意味の無いって……いや、いいです。いい加減に本題に入らないと」
ron「そうだな。と言うわけで、『虚構世界の真実外伝 よろしくメ○ドック』をお届けします」
政 文「おいこら」
ron「なんだ、『真奈にお任せ♪』の方が良かったか」
政 文「なお悪いわいっ」
ron「ふぅ。わがままな奴……」

(目の前に持ち上げた握り拳を、震わせる政文)

ron「……いや、冗談のようが気がしてきた。うん、冗談、冗談」
政 文「……で?」
ron「では改めて『虚構世界の真実外伝 BASIC Player's Story』第1話をお送りします」
政 文「0.5話とか言ってなかったっけ?」
ron「そうも思ったんだけどね。今回本編にくらべて短かいのは確かなんだけ、まぁ1話は、1話だし、ずっと短いかもわからないし(苦笑)」
政 文「……ここまでしか書けなかったわりに、大きく出たな?」
ron「……この宇宙には、知らない方が良い真実も存在するのだ」
政 文「今回、DP戦出てこなかったし」
ron「あ、それは2つある方針の一つ。なんだか最近、Web上のDPノベルってスーパーロボットみたいのばっかり出てると思わない?」
政 文「言われてみれば……」
ron「当然そうでないのもあるし、それでも良いんだが、BPSでは、DPが、リアルなワールドシミュレータである事を再認識する為に、リアリティを追求してみようかと思ってるんだ」
政 文「リアリティ?」
ron「そう。その一環として、大人でさえ、やりこむのに食費をつぎ込む事もあるVPをそう毎日できるはずが無いと言う結論に……」
政 文「ちょっと待てい!」
ron「いや、冗談じゃなくてさ。特に女の子なんか服買ったりアクセサリ買ったりさ、いろいろ出費がかさむはずなのよ」
政 文「いや、それは……」
ron「なのに、なんでそんなに金があるのか! いやあるはずがない!」
政 文「単に安いだけじゃないのか?」
ron「…………まぁそれは置いておく。もう一つの理由は、単に進行が遅いので、戦闘が出てこないだけ、なったらなったで、今度は暫く続くかも……」
政 文「まぁ、それは仕方がないのか……」
ron「その分、リアリティの方は、きっちり突き詰めるよ。話の展開上しかたがなければRやXも」
政 文「こらこら」
ron「なんだ。真奈が嫌いなのか?」
政 文「は!? ……って、ちょ、ちょっとまて(汗)」
ron「最近の子は早いらしいから。さて、次回ですが、もしかしたらこのまま勢いに乗って、第1話が出来上がるか、他のが先になるかは未定ですがそう時間もかからずに、次をお届けできると思います。」
政 文「おい、こら待てと言ってるだろうが」
ron「それでは次回『第2話 決意』でお会いしましょう」
政 文「ひ、人の話を聞けーっ…………!」

フェイドアウト


 なお、ご意見・ご感想・誤字脱字の発見はこちら、もしくは感想BBSにどうぞ。

メインホールへ