朗々とした教師の声が、響く教室。ポカポカと暖かい陽気の中、空けられた窓からの風に、カーテンが軽くたなびく、そんな昼下がりの授業時間は、一種独特の静寂が、教室を包みこむ。
 もちろん、その静寂の原因には、居眠りにも含まれるのだが、この久賀貫と言う教師は、そういう事には、あまりとやかく言わないタイプな事もあり、授業の邪魔さえしなければ、それなりの自由な時間を満喫できる。
「・・・容量って、パーツ毎に固定ってわけじゃないのか・・・」
 声も無くつぶやきながら、ハイドラフター4のオンライン説明書を黙読する。
 教科書の内容は、裏のタブに開いたままで、実際は別のページを見てるなんて事は、今時、珍しい事じゃない。
 とはいえ、赤点を取らなければと言う前提ではある。
 親に指摘されるまで気づかなかったのだが、怒られたうえ、赤点後の補修・追試・追試の為の勉強にかかる時間をちゃんと数字として試算すると、その一科目分の授業の半分よりも多く掛かる事を実証された時は政文も納得したものだ。もっとも、今この時に時間が無いのであれば、まぁ後で増えても仕方が無いかなと思うことも少なくなかったが。
 後で真奈に見せてもらえば良いかと割り切って、説明書を読み進めていると、終業のチャイムが鳴った。



 虚構世界の真実外伝

 BASIC Player's Story

  第2話 「決意」




 帰り道。政文が、ノートを後で貸してくれるよう頼むと、真奈は、困ったような表情を浮かべながらも了承した。
「政文ちゃんが、授業聞いてないのって珍しいね。何してたの?」
「ハイドラフターの説明書読んでた」
 その言葉に、真奈が心底困った顔になる。
 真奈としては、注意した方が良いかなとも思うけど、DPをずっと我慢していた事も知っているので、仕方が無いかなとも思ってしまう。他にも僅かな罪悪感もあり、結局、真奈は注意の言葉を口にはしなかった。政文が授業中別のことをするなんて、本当に珍しいのだ。
「あれ、通常起動って簡易モードなんだな。もっと細部までいじれるモードがあるなんて知らなかったよ」
「あ、うん。制限はすごく多いけど、その制限の中でなら、殆どあらゆる部分がカスタムできるんだって」
 そこまで話たところで、電車が来たので慌てて駆け出す。この最寄り駅の路線は、単線で20分に一本しか来ない。乗れなければ補導員満載の駅前で20分時間をつぶすはめになる。
 高校生の放課後の20分は貴重だ。
 同じ考えの十数人と共に、飛び乗ると同時に電車は動き出した。
 息を整えている間に、あっと言う間に、農村のような風景になる。埼玉でも、このあたりは、まだまだ広大な耕作地が残っている。
「……ま、そんな状態だから、もう少し勉強だな」
「え? な、なに?」
 政文の言葉に、ぼんやりと窓の外を眺めていた真奈が、慌てたように振り向く。
「さっきの話だ。使い方についての解説ページなんかも結構あるみたいだしな」
「あ、カスタムの……そうだね。ゆっくりやれば良いと思うよ。人によっては、半年もかける人とかも居るんだって」
「半年はごめんだな」
 政文がため息をつくと、真奈が可笑しそうに笑う。
 半年とは言わずとも、実際にフルカスタムのVPを組むのは並大抵の事ではないようだ。一週間ぐらいは掛かるかのかもしれない。
 政文は、授業中に読んでいた説明書を思い出す。
 実際、通常簡易モードで立ち上がると言う事は、普通の人は、簡易モードしか使わないと言う事だろう。事実、説明書に書かれていた事が確かだとすると、やろうと思えば、骨格の素材の組み合わせから捻りの度数まで細かく変更が聞くらしい。武器や装備に関しても、銃弾一発から創作できる。
(TENさんが乗っていたのもそうやって中身をカスタムした物だったのかな……)
 先日、ノービス叩きから助けてくれた、VP乗りの事を思い出す。たしかに、どんなに強くても市販機で、カスタム機を総舐めにできるとは考えにくい。
「俺も強く、」
 VPも強くならなきゃ『戦乙女』には、追いつけない。その為には……。
「政文ちゃん。何か言った?」
 政文の呟きが聞こえたのか、真奈が聞き返えす。
 視線を向けると、真奈は、きょとんとした表情で見返してくる。
 しばらくそんな真奈を見ていた政文は、ふと良子の言葉を思い出した。

『悔しかったら、真奈のペルソナでも見て勉強しなおすのね。じゃっまたねぇ』

 あの言葉、あの状況から考えるに……。
 政文が、一つの考えに行き当たるのと、真奈が耐えかねるのは同時だった。
「あの……政文ちゃん?」
「真奈、この後なんか用事あるか?」
「え? 特にないけど」
 バトルロイヤルでは、練習にならない。ストーリーモードがあるにはあるが、対人戦の方が練習には良いよな……。
 見つめられてうっすらと顔を赤らめさせた真奈には気づかず、政文はラッキーとばかり喜色満面になる。
「じゃぁ、ちょっと付き合ってくれ」
「うん」
 真奈は、素直に頷くしかなかった。







あとがき

政 文「また俺か?」
ron「何せ、皆忘れていると思うからな(苦笑)」
政 文「……てめぇが、書かないからだろうが。」
ron「否定のしようが無いな……自分でもまさかこれほど空くとは」
政 文「俺は、再開した方がびっくりだよ」
ron「いや、ある人のを見ててむくむくと連載小説が書きたくなってな。で、よく考えてみたら、未だ完結していないのが、山ほどあって」
政 文「……」
ron「……」
政 文「まぁ、いい。で、このままの世界観で続けるのか?」
ron「DP5とかまで行っちゃうとわけわかんなくてね。とりあえずこのままだ」
良 子「だっぁ!! あんたら何たらたらと話してるのよ!」
ron「いやまぁ、座談会形式だし。なぁ?」
政 文「なぁ?」
良 子「なぁ? じゃないわよ! シャキッとしなさいシャキッと! あーもうじれったい」
ron「そう言われてもな……」

(目の前に持ち上げた握り拳を、震わせる良子)

ron「……いや、そうだなシャキッと行こう、シャキッと」
良 子「それでいいのよ。で、次回は?」
ron「いい加減にDPが出てくる(苦笑)」
良 子「私は?」
ron「はい?」
良 子「私の出番は?」
ron「……」
良 子「……」
ron「それでは次回『第3話 ペルソナ』でお会いしましょう。あ、こら政文一人で逃げるんじゃない」

フェイドアウト


 なお、ご意見・ご感想・誤字脱字の発見はこちら、もしくは感想BBSにどうぞ。

メインホールへ