〜ブルーフォレスト物語〜 「舞」

by 龍童真君





   シャン

 静まりかえった広場に響きわたる。

   シャシャン

 手足の動きにつられて鈴がゆれる。人々の視線が集まる。

   シャン

 思いが嵐となって体を動かす。
 鈴が拍子を取り、衣が腕が天を裂き大地を包む。

   シャシャン

 全ての動きを以って人々の意識を捕まえる。

 今、私はあの人と同じ舞台に立っている・・・


 

「さあ寄っといで! われらが一座の若く麗しき座長カグナヴァーダが『舞い』を舞うよ! 見なきゃ一生後悔するよ!」

 人の良さそうな一座の男が、声を張り上げ人を呼び込む。
 その声に導かれて集まってくる人々。もっともこれだけ人が集まったのは呼び手の呼び込みよりも、ひとえに踊り手の人気のせいであろう。 仕事をしていた一座の人間までもが、仕事の手を止め集まってくる。

  シャン

 その鈴の音でざわめきがすうっと静まる。そしてその女に人々の視線が集まった時、女は静かに動き出した。

  シャン

 女の動きに合わせて腕輪についた2つの鈴が静かにそしてはっきりと音を奏でる。緩やかに動く女の身体が人々の心を静かに溶け合わせて行く。
 その時幼い私は、父のひざの上で『舞い』を魅ていた。一挙動ごとに心が何かを感じ、一つ一つの動きが誰かに何かを伝えたがっているように思える。
 そして彼女が舞い終わってもその場を動く事ができなかった。


 

 あの『舞い』を見た時、私の人生は決められてしまった。・・いや、自ら望んでその人生を選んだのだ。

   シャシャン

 今、私はあの人と違う道を通って同じ場所に立っている。

   シャン

 私の動きが止まるとともに人々の思いが押し寄せてくる。そしてふと目を大きく見開いたまま私を凝視する少女が目に止まる。

 既視感。

 まるで、私が目の前にいるような感覚。
 私はその少女に微笑みを残しその場を後にする。あの子も私と同じ道を歩むのだろうか? それともあの人と同じ道?


 思いをのせて私は踊る。あの人の道といつか交わる事を願いながら。

 思いを集め私は踊る。私の後を追うものを待ちながら。


 私は『踊り』で思いを伝えるのだ。