〜英雄奇憚〜 「流れ流れる勇者達」

by ボウ リュウシ


 窓から見えていた夜景が、光の本流に隠された。

 なんて言えばかっこいいが、単に逆行きの電車とすれ違っただけの事だ。
 俺は中河十児。天下御免のフリーター、いや元フリーターだ。 で、今は何かと言うと、聞いて驚け。なんと異世界で勇者なんぞと呼ばれている。 ・・・訂正。たぶん異世界だろうと思われる場所で、だ。
 俺達が、そうこれが俺だけってわけじゃないんだが、今住んでいる街───住人は翠空って呼んでる───には、なんと100人ばかしの勇者が居るんだ。 実際、全人口の8割強が勇者って計算になる。そしてこの街は、乗り物でもある。異次元を渡る島って言った方がわかりやすいか?
 で、勇者たる俺達は、この街がついた先々で勇者をしているってわけだ。

「なにブツブツ言ってるのよ」
「な、なんでもない。独り言だ!」
「なに慌ててるのよ?」
「独り言につっこまれたら、普通慌てるもんだろうが」
「・・・変なの」

 ふう。・・・と失礼した。今話し掛けてきた水色の髪の美少女は、メイ・トルーミア。マーメイド族の「機械使い」で、俺の相棒だ。
 勇者は別に俺達の世界からだけ召喚されるってわけじゃないって事だ。人魚なんて俺達の世界にいるわけないだろう?
 なに? 足があるじゃないかって? まあ、当然の質問だな、俺も不思議に思ったし。 前に尋ねてみたんだが、なんでもメイの一族は、可変マーメイド族とか言う一族で、任意で、人魚と人のどちらの姿にもなれるのだそうだ。

「ねえ。いい加減に開けるわよ?」

 ・・・まったく、風情の無い奴だ。

「悪かったわ・・・」
「そこがまた可愛いんだけど」
「・・・・・・」

 おーおー、顔真っ赤にしちゃって・・・。美人、純真、惚れっぽさ、ってのは人魚族の三大要素って言われてんのも、まんざらじゃなさそうだな。
 ん? いや、俺も誰がそう言い出したのかは知らない。翠空の神殿図書館にあった『種族大辞典 ─異種族の不思議─』って本に書いてあったのをちらっと見ただけだから。
 ともかく俺達は、勇者としてこの世界の魔王を倒す為に、はるばる魔王の城の玉座の間に繋がる最後の扉の前まで来て、お約束の今までの回想───最初のあれだ、あれ───に、浸ってたわけだ。

 ・・・なに? 展開がはやいぃ? そんな事、俺が知るかっ!


つづく