〜英雄奇憚〜

by ボウ リュウシ


「まっていたぞ、トージ!」

 俺達が扉を開けると、かなり遠くにある玉座に座っていた魔王が勢い込んで立ちあがった。
 ・・・まあそれは、魔王がいるのはいい。予想通り事が進んでるわけなんだから。問題はそいつが見飽きた面をしてるって事だ。

「・・・・またてめえか」
「や、やかましい! 今日こそは決着を付けてやるぞ!!」

 その魔王は俺の溜め息のような言葉に焦ったように声を荒立てる。
 ちと説明しておくとするか。こいつの名はクーガ、この世界では大魔帝ガークゼスタと名乗っていたはずだがな。 で、なぜ俺がこいつを知っているのかと言うとだ、こいつと闘うのはこれで5回目なんだ。まったくついてない。 ・・・まてよ? 幾らなんでも5連続ってのは変だな。・・・まさか、こいつ裏で何かやってるのか?

「決着なんてもうついてるじゃない」
「これは心外な。私は、貴女にならいざ知らず、あのけだものに負けた事は一度たりともありませんぞ」

 メイの当然の突っ込みに、丁寧な返答を返す魔王。さっきまでの俺との態度と比べりゃ、笑い話にしかならないよなぁ。

「メイ、下がってろ」
「え? なんで? あいつが相手なら私1人でだって倒せるよ?」

 そりゃ違うぞメイ。「おまえが」じゃなくて「おまえだから」勝てるんだよ。ほら奴が無理して動揺を押さえてる。
 しばらく前に、メイが先に行くって言うんで「ここぞって所で出て行けば・・・」とか思って先にやらせ事があったんだ。 そしたら、あの馬鹿あっさり負けやがってよ。おかげで、こっちは虚しい想いをするは、奴には逆恨みされるわで散々だったんだ。
 まあ、あいつの実力なら本来はメイに負けるはずなんて無いんだが、誰でも“惚れた弱み”ってやつはどうしようもなんないもんでな。

「メイ。男は女を守るものだなんて古風な事は言わんが、好きな女の前なんだから、少しはカッコ付けさせてくれよ」

 俺は、嫉妬に燃えるクーガを横目に見ながらメイの耳元にささやく。この態勢じゃあ奴は攻撃できないから背を向けてても安心だ。
 で、メイはと言うと、頬を赤らめさせたまま俺を見上げていたが、しばらくしてコクリと小さくうなずいた。
 ・・・クゥーッ可愛すぎるっ。やっぱクーガなんかにゃ意地でも渡せねえぜ。


つづく